屬性ベースアクセス制御(ABAC)と役割ベースアクセス制御(RBAC)の統合戦略

はじめに

現代のセキュリティ要件に対応するため、アクセス制御技術は継続的に進化しています。従來の役割ベースアクセス制御(RBAC)は、ユーザーと役割の関係性を管理するシンプルなモデルでしたが、複雑な業務環境では柔軟性に限界がありました。一方、屬性ベースアクセス制御(ABAC)は、ユーザーの屬性やコンテキスト情報を活用した動的制御を可能にしますが、標準化や実裝の複雑さが課題です。本記事では、RBACとABACの統合戦略を解説し、Apache Fortressを用いた実踐的な実裝方法を紹介します。

RBACモデルとその課題

RBACの基本概念

RBACは、ユーザー、役割、権限、セッションの4要素を基盤に構築されます(RBAC0)。高階役割(RBAC1)は役割の管理を簡略化しますが、必須ではありません。分離職責(RBAC2)は、役割の組み合わせを制限する靜的または動的な制約を提供します。行政API、審査API、実行時APIを通じて認証、権限付與、ポリシー管理が実現されます。

RBACの拡張課題

コンテキスト(context)を導入する際、役割數が指數関數的に増加します。例えば、各クライアントごとに役割を追加する必要がある場合、金融機関などでは數萬の役割が発生し、システムの複雑さと保守コストが増大します。

ABACの導入と利點

ABACの基本特性

ABACは、屬性(attribute)を基盤とし、ユーザーのID、時間、場所、デバイスなどの情報が屬性として利用可能です。動的権限付與により、細粒度の制御が可能になります。例えば、特定の時間帯に特定の店舗のカウンター擔當者だけが操作を許可されるといったケースです。事前に役割を定義する必要がなく、柔軟性が高いため、役割爆発(role explosion)の問題を迴避できます。

ABACの課題

屬性のソースとデータモデルを明確に定義する必要があります。また、標準化が進んでいないため、実裝の差異が生じやすく、再利用性が低下します。

Apache Fortressの実踐と改善

Fortressの設計

FortressはRBAC 359規範に基づいて設計され、役割の活性化と屬性制約をサポートします。REST API、Webインターフェース、コアAPIを提供し、Webアプリケーションやバックエンドシステムに適用可能です。役割活性化メカニズムにより、特定のコンテキスト(例:特定の店舗)で役割を有効化できます。

屬性制約の応用

  • 役割層面:役割を有効化する際、コンテキスト情報(時間、場所)を追加します。例:カウンター擔當者役割を店舗314のみで有効化。
  • 権限層面:操作時に屬性條件を追加します。例:特定のアカウントに対して操作を許可。
  • 時間・空間制約:時間帯(例:平日8:00-17:00)や場所(例:特定の店舗)の制限をサポート。

RBACとABACの統合戦略

ポリシー強化RBAC(Policy-Enhanced RBAC)

NIST Insight 494規範に基づき、RBACとABACの長所を統合します。役割を有効化する際、屬性制約を導入し、役割爆発問題を迴避しつつ、RBACの使いやすさを維持します。例:ユーザーが「カウンター擔當者」役割を有効化する際、自動的に店舗番號屬性を追加し、操作範囲を制限します。

Fortressの実裝詳細

  • 屬性式(例:teller AND store=314)をサポートし、ポリシーランゲージで條件を定義。
  • ユーザー-役割関連付けに屬性制約を追加し、動的権限付與を実現。

実際の応用ケース

伝統的なRBACの使用例

3ページのアプリケーションと3つのクライアントを組み合わせる場合、ページ-クライアントの組み合わせごとに獨立した役割を定義する必要があります(合計9つの役割)。ユーザーが役割を有効化しないと、対応するページにアクセスできません。

ABAC/ポリシー強化RBACの改善

ユーザーが「カウンター擔當者」役割を有効化する際、自動的に店舗屬性を追加し、個別の店舗ごとに役割を定義する必要がありません。屬性條件により、操作範囲を制限(例:アカウント456に対するクエリのみを許可)。

結論と今後の方向

標準化の必要性

ABACは明確な規範が求められ、実裝の一貫性を高める必要があります。屬性ベースのポリシーランゲージとデータモデルの標準化が鍵です。

Fortressの位置づけ

RBACとABACの橋渡しとして、屬性制約によりRBACの拡張性問題を解決します。今後は、デバイスタイプや地理的位置などの追加コンテキスト屬性をサポートして、柔軟性を向上させることが期待されます。

技術的アーキテクチャとツール

LDAPディレクトリ

ポリシーの保存とクエリに使用される軽量ディレクトリアクセスプロトコル(LDAP)。Apache Directory Studioが利用可能です。ユーザー條目には役割指派と屬性制約情報が含まれます。

API設計

RoleConstraintクラスを導入し、役割活性化時に屬性條件を設定。セッションが実行時において屬性條件に基づき役割を有効化します。

実際の応用ケース:金融機関の権限管理

役割と屬性の設定

  • カウンター擔當者(Coin Washer):特定の地域(North/South)で制約。
  • カウンター擔當者(Teller):特定の地域(East)で制約。

ユーザーの指派例

  • Curly:カウンター擔當者(North/South)、カウンター擔當者(East)。
  • Mo:カウンター擔當者(East/South)、カウンター擔當者(North)。

ポリシーモデル

役割と屬性を分離し、役割爆発問題を迴避。屬性制約により柔軟な権限管理を実現。

権限実行段階での屬性の応用

権限制限の例

  • アカウント番號の特定條件に合致した場合にのみ操作を許可。
  • 金額上限(例:500ドル未満)を設定。

今後の拡張

現時點では実裝されていないが、屬性制約を追加することで実現可能。

システム設計の考慮點

ABACとRBACのバランス

ABACは柔軟な屬性制御を提供するが、実裝複雑度が高い。RBACはシンプルだが、コンテキスト制約が不足。Apache Fortressは両者の長所を統合した中間解。

部署と保守

Ansible Playbookによるシステム設定を提供。すべての例と設定はGitLabで公開。

結論

核心的な価値

屬性制約を活用したRBACの統合により、より細かいアクセス制御を実現し、役割爆発問題を迴避。

適用場面

動的コンテキスト判斷が必要なシステム(例:金融機関、企業リソース管理)に適しています。

今後の方向

屬性制約メカニズムの継続的な最適化と、権限実行段階での屬性応用の実現が期待されます。